丸井金猊

KINGEI MARUI

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芸工展2025「法隆寺金堂壁画複製印刷と丸井金猊*観音圖」

法隆寺金堂壁画複製印刷と丸井金猊*観音圖
芸工展2025 Kingei Marui Resources vol.30

芸工展2025「法隆寺金堂壁画複製印刷と丸井金猊*観音圖」では、2020年コロナ禍で限定公開となっていた「写と想像⇄創造」展法隆寺金堂壁画12壁のコロタイプ印刷複製プリント百済観音含む観音4体が引用された丸井金猊『観音圖*』および伝世舎に修復を依頼した『唐本御影写 聖徳太子二童子像』を再展示いたします。

また、本展は来年開催予定の芸工展2026「観音圖■相澤哲也▲溝口泰信●丸井金猊」のプロローグとして谷中M類栖としては初めての挑戦となる二人の画家を招聘しての新作展示による企画展に向け、その序説ないし前説取説(マエセツトリセツ)のような場にもなればと考えています。

「写と想像⇄創造」展に関しては朝日新聞社の柏木友紀さんが取材記事でわかりやすくまとめてくださっているので、幻の特別展を「再現」 法隆寺金堂壁画複製写真など(2020年11月13日・朝日新聞)をご覧ください。

(主催者が大阪在住のため、広報や取材を前提としたお申込みに限らせていただきます)
(展示準備は出来ており、9月中も対応可能です)

10月25日㊏26日㊐と2日間、展示日を追加いたしました❗


芸工展2025「法隆寺金堂壁画複製印刷と丸井金猊*観音圖」

会期:2025年10月4日㊏〜6日㊊・10月10日㊎〜13日㊊㊗・25日㊏・26日㊐
時間:13:00〜17:00
会場:丸井金猊ラボ∞谷中M類栖/1f(入場無料・予約不要)
   〒110-0001 東京都台東区谷中1-6-3(Google Map芸工展マップ㊱

主催:丸井金猊ラボ∞谷中M類栖(代表・孫の丸井隆人)
作品修復:伝世舎
情報提供・協力:宝塚市立中央図書館
印刷協力:remo [NPO法人 記録と表現とメディアのための組織]
SNS:FacebookInstagramLINEPeatixX、各ハッシュタグは #kingeimarui
紹介:美術館・展覧会情報サイト アートアジェンダ


企画趣旨

「写と想像⇄創造」展は2020年新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止となってしまった東京国立博物館 特別展「法隆寺金堂壁画と百済観音」を下敷きとしていて丸井金猊が画中に法隆寺の百済観音像を描いたタイトル不詳の屏風『観音圖*』と、法隆寺金堂壁画コロタイプ印刷の複製品を所蔵する宝塚市立中央図書館からデータ借用した複製プリントをなるべく法隆寺金堂内と同じ方位に12壁画すべて配置することで(6号壁は実寸サイズで展示)、東博の幻となった特別展の法隆寺金堂壁画と百済観音を文字通りオマージュするような企画でした。

芸工展2020「写と想像⇄創造」展より
西側壁面に左から5号壁 菩薩半跏像、6号壁 阿弥陀浄土図、7号壁 聖観音菩薩像、北側壁面に金猊*観音圖

今年、奈良国立博物館開館130年記念特別展「超 国宝-祈りのかがやき-」が開催され、そこで法隆寺百済観音法隆寺の大宝蔵院で拝むよりも遥かに間近に低い視点で背後からも拝観することが出来ましたが、東博で準備されていた特別展「法隆寺金堂壁画と百済観音」において百済観音を間近に観たかったという想いはより一層強まりました。と申しますのも同展図録の三田覚之氏「百済観音像誕生の謎論考では百済観音の臀釧(ひせん)腕釧(わんせん)の装飾と法隆寺献納宝物である灌頂幡(かんじょうばん)の金銅金具の造形意匠が共有されていることに着目され、それらが一具として鎮魂の目的で法隆寺に献納されたのであれば、歴史的にみて百済観音像は当時より法隆寺金堂内陣北側に安置されていたのではないかと推察されています。

金猊*観音圖の臀釧・腕釧と金銅灌頂幡の全体・第4坪
金猊*観音圖の臀釧・腕釧と金銅灌頂幡の全体・第4坪(写真はWikipediaより)

谷中M類栖ではスペース都合で北側壁面に百済観音の描かれた金猊『観音圖*』屏風を配置しており、奇しくもそれは三田氏の考察と近い位置関係となっているのです。金堂壁画の方は8〜11号壁に関しては方位だけ一致したかなり窮屈なレイアウトとはなっていますが、それでも視覚上の空間感としてまさに法隆寺金堂内にあったかもしれない百済観音像をふだんは住宅スペースという日常が異質化した空間において味わうことができます。

北側壁面に左から7〜11号壁、東側にはタペストリーでぶら下げた12号壁、1〜2号壁が所狭しと並ぶ
北側壁面に左から金猊*観音圖、7〜11号壁、東側にはタペストリーでぶら下げた12号壁、1〜2号壁が所狭しと並ぶ

コロナ禍では予約制で時間制限を設けた限定的な場としてしかご覧いただけなかった空間を今年はフルオープンで公開したいと考えています。展示内容は前回と同じですが、金猊が東京美術学校入学前の18歳時に描いた『唐本御影写 聖徳太子二童子像*』『聖徳太子二童子像*』2作品も2022年まで「修復のお仕事展」の企画で芸工展に参加されていた伝世舎さんに修復依頼していてリニューアルした形でご覧いただけるようにする予定です。一度ご覧になられている方には来年企画前説(マエセツ)を!ということもありまして、お時間ありましたらお気軽にお立ち寄りください。

南側壁面に左から金猊*馬上太子圖、唐本御影写、聖徳太子二童子像と並び、上に3号壁 観音菩薩像、4号壁 勢至菩薩像
南側壁面に左から金猊*馬上太子圖、唐本御影写、聖徳太子二童子像、上段に3号壁 観音菩薩像、4号壁 勢至菩薩像

展示作品

観音圖* 1936(昭和11)年頃 紙本彩色, 四曲屏風 226.0×332.0cm
聖徳太子二童子像* 1928(昭和3)年 絹本彩色, 額 50.8×70.0cm
唐本御影写 聖徳太子二童子像* 1928(昭和3)年 絹本彩色, 額 50.8×38.5cm
馬上太子圖* 1928~35(昭和3~10)年頃 絹本彩色, 軸 52.3×38.5cm
・法隆寺金堂壁画12壁コロタイプ印刷複製プリント(原版は宝塚市立中央図書館 所蔵)

*マークはタイトル不詳で、主催者が仮で設定したものです。

金堂壁画コロタイプ印刷と再現壁画の同時代画家たち

金堂壁画の複製写真は、昭和10年に京都の美術印刷会社「便利堂」がガラス乾板に原寸大撮影した写真のコロタイプ印刷の複製品のデータプリントで、複製品自体は国内外25箇所の博物館、図書館、大学などに頒布されました。宝塚市立中央図書館もその所蔵先の一つで、2014年に同館で開催された「宝塚歌劇のあゆみ」展に金猊が東宝劇場の壁画に描いた『薫風』の下絵を出品したご縁で、その複製写真データをお借りできることになりました。

昭和24年の法隆寺金堂火災で焼損した壁画に代わって現在設置されている再現壁画はこのコロタイプ印刷を下図として安田靫彦前田青邨ら当時の精鋭画家によって模写制作が行われ、実物を実見できない画家の目を補完する重要な二次資料となりました。しかし、当時の画家の手記を読むと写真に写し出された壁画の剥落や変色をどう捉えるか、将来の経年変化をどう想定するかなど、現物に忠実な写生と言ってもそこには画家の想像力に委ねざるを得ない面があることが伺えます。言い換えるなら模写であってもそれを描く画家の作家性を完全に消し去ることはできません。

本展では1号壁〜12号壁まで各壁画の下にキャプション型ファイルを配備し、壁画概要、焼損壁画、コロタイプ印刷、桜井香雲模写、鈴木空如模写、再現壁画模写画像と、再現壁画を担当した画家の代表作、プロフィール、そして再現壁画が完成した際に書かれた担当画家全員の報告文書を掲載しました。

これによって再現画家たちの模写に対するスタンスとそれが各々の作品にどのように反映しているかをその場で確認できるのではないかと思っています。それを補完するために、各画家の全集・図録も用意し(情報の見つからない近藤千尋を除く)、キャプション型ファイルの下に置きました。最高齢の安田靫彦が1884年、一番若い平山郁夫が1930年生まれと1909年生まれの金猊はほぼ真ん中に当たる年齢で、云わば金猊にとっての同時代作家がどのように金堂壁画と向き合ったかということを考える機会にもなればと思っています。

丸井金猊「写と想像⇄創造展」展 南側壁面 丸井金猊「写と想像⇄創造展」展 西側壁面
南側壁面立面図                   西側壁面立面図
丸井金猊「写と想像⇄創造展」展 北側壁面 丸井金猊「写と想像⇄創造展」展 東側壁面
北側壁面立面図                   東側タペストリー展示写真

金猊*観音圖と来年の企画

丸井金猊『観音圖*』

制作年・制作者・出所不明の謎多き観音菩薩像(百済観音・像高約210cm)を主モチーフとし、他にも人物の衣装に法華寺十一面観音聖林寺十一面観音法隆寺救世観音の衣装バーツを引用した丸井金猊『観音圖*』はこちらも制作年・タイトル不明の屏風(内寸226×332cm)で、上記の衣装引用は美術史研究者の山本陽子によって絵解きされたものの、解明されていない人物がまだ3人いて、研究・考察の余地を多く残した作品となっています。

引き続き研究者による解析・解明を待ちたいところではありますが、それとは異なるアプローチとして『観音圖*』が発見された1997年頃より同作品を知る二人の画家を招聘して、来年の秋に『観音圖*』の両翼に並ぶことを意識した新作制作を依頼し、芸工展2026「観音圖■相澤哲也▲溝口泰信●丸井金猊」という企画展を開催することにしました。企画は2024年10月末より始まっていて、主催者含む3人で奈良の法華寺→聖林寺→法隆寺と三寺四観音を巡り、その後も和辻哲郎『古寺巡礼』の読書会をオンラインミーティングで進めながら構想を暖め、軸四幅にそれぞれ四観音をモチーフとした作品を制作してもらう(作品自体の絵は仏像でなくてもよい)ということで話は進んでおります。

本展では金猊『観音圖*』を観ながら来年計画してる展示の企画意図もご説明できればと考えています。そのお客様との対話からも新たな発見や絵解き、解明に繫がるきっかけが生まれることを期待して、まずは今年よろしくお願いいたします。


芸工展の2つの別企画にも参加!

芸工展2025マップ㊳
池之端画廊 上野の森を巡る画家たち展(III)(金猊参加)

池之端画廊  上野の森を巡る画家たち展(III)

出品者名:長谷川利行、富田温一郎、安田半圃、望月春江、布施信太郎、熊谷登久平
(生年順)野間仁根、丸井金猊、坪内正、絹谷幸二、鈴木美江、松本昌和 ほか

2025年10月8日㊌〜26日㊐ 11:30〜18:00
月曜・火曜休廊/初日13:00から・日曜16:00まで
東京都台東区池之端4-23-17(Google Map
https://www.ikenohata-art.com/post/20151008


芸工展2025マップ㉙
PHASE番外編11「つつぬけの宇宙」(m-louis参加)

PHASE番外編11「つつぬけの宇宙」井上ひろ子、織田和子、北川亜紀子、小池航、
小林操子、酒井洋子、田中みどり、坪内紀子、
藤井志津子、丸井隆人、村山節子、吉田佳寿美
(五十音順)

協力:井上義教、藤井アキラ

2025年107日㊋〜13日㊊㊗
11:00〜19:00
 最終日17:00まで
ギャラリーTEN
東京都台東区谷中2-4-2(Google Map
http://galleryten.org/ten/企画案内

PHASE番外編11「つつぬけの宇宙」