2008年 いまあざやかに 丸井金猊展 図録
丸井金猊と古美術の学習─画家の茶目っ気─
山本陽子(美術史学者)
画家はその作品の中で、しばしば茶目っ気を発揮する。江戸時代の画家がしばしば描く、七福神が宴会をしている図のように、一見して笑い出すようなお茶目な絵だけではない。畢生の大作に潜めた自らのこだわりを、人が気付かなければ何十年も何百年も黙ったままで、いつか誰かが気付くのを、あの世でほくそえみながら待っていることもある。丸井金猊の絵も、おそらくは作者の非常な苦心の結果であろう工夫が、さりげない形で散りばめられたものである。
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2008年一宮市博物館 特別展「いまあざやかに 丸井金猊展」図録に寄稿された山本陽子さんの金猊論。本論はその序文で以下の章立てで構成されている。
- 序
- 第一章 壁畫に集ふ
- 第二章 百済観音のリニューアル
- 第三章 仏像のリボン
- 第四章 古今東西
- 最終章 天馬翔る
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最終章「天馬翔る」でも言及されるが、山本陽子さんは学生時代に晩年の金猊と直接話しており、「美術」の視点から生の金猊を語れる数少ない存在である。