宝塚市立中央図書館×丸井金猊「写と想像⇄創造」展
東京国立博物館 幻の特別展「法隆寺金堂壁画と百済観音」に謝して
2020年3月13日㊎~5月10日㊐に東京国立博物館で開催予定ながら新型コロナウイルス感染の影響で中止となった特別展「法隆寺金堂壁画と百済観音」では、昭和24年の金堂火災により焼損した壁画の火災前・後の模写、および法隆寺大宝蔵院に安置された観音菩薩立像「百済観音」の実物が展示される予定でした。☞報道陣のみ公開
その展示に触発され、丸井金猊ラボ∞谷中M類栖では金堂壁画の複製写真と、百済観音を画中で模写しながらもデフォルメした金猊のタイトル不詳屏風「観音圖*」を展示いたします。
尚、感染防止策として1時間1団体様対応という事前予約制で実施いたします。☞ご予約
(10月開催分は芸工展2020にも参加いたします)
芸工展2020
東京国立博物館 幻の特別展「法隆寺金堂壁画と百済観音」に謝して
宝塚市立中央図書館×丸井金猊「写と想像⇄創造」展日時:2020年9月19日㊏〜22日㊋㊗・10月2日㊎~5日㊊ 13:00〜18:00
1時間1組迄の事前予約制 ☞予約状況・予約お申し込み
会場:丸井金猊ラボ∞谷中M類栖/1f(入場無料)
〒110-0001 東京都台東区谷中1-6-3(Google Map)
主催:丸井金猊ラボ∞谷中M類栖(代表・孫の丸井隆人)
情報提供・協力:宝塚市立中央図書館
印刷協力:remo [NPO法人 記録と表現とメディアのための組織]
広告:Peatix:9月開催分・10月開催分
SNS:Facebook、Instagram、LINE、Twitter ハッシュタグは #kingeimarui
チラシ:PDF再改訂版(1.5MB)
- 関連テクスト
- 山本陽子 - 丸井金猊と古美術の学習(一宮市博物館「いまあざやかに 丸井金猊展」図録)
・第二章 百済観音のリニューアル
・第三章 仏像のリボン
・第四章 古今東西
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- 2019.11.26 朝日新聞:法隆寺の金堂壁画、焼失前の色彩蘇る デジタル技術で
- 2019.10.26 朝日新聞:法隆寺住職・大野玄妙さん死去 金堂壁画など公開へ尽力
- 2019.10.13 1089ブログ:特別展「法隆寺金堂壁画と百済観音」報道発表!
展示予定作品
・観音圖* 1936(昭和11)年頃 紙本彩色, 四曲屏風 226.0×332.0cm(谷中M類栖 所蔵)
・聖徳太子二童子像* 1928(昭和3)年 絹本彩色, 額 50.8×70.0cm(個人蔵・江南市)
・唐本御影写 聖徳太子二童子像* 1928(昭和3)年 絹本彩色, 額 50.8×38.5cm(同上)
・馬上太子圖* 1928~35(昭和3~10)年頃 絹本彩色, 軸 52.3×38.5cm(個人蔵・一宮市)
・法隆寺金堂壁画コロタイプ印刷の複製プリント(宝塚市立中央図書館 所蔵)
*マークはタイトル不詳で、主催者が仮で設定したものです。
資料展示
・東京国立博物館 特別展「法隆寺金堂壁画と百済観音」図録
・同展特別販売「国宝・百済観音フィギュア」(海洋堂 制作)
・奈良国立博物館「法隆寺金堂壁画写真ガラス原板─文化財写真の軌跡─」図録
・日本美術全集2 法隆寺と奈良の寺院(小学館 出版)
・法隆寺監修・朝日新聞社編「法隆寺再現壁画 大型本」
・朝日新聞社「法隆寺 壁画と金堂」
・アサヒグラフ増刊1968年4月15日「法隆寺金堂 壁画再現」
・再現壁画の模写画家の画集や図録(近藤千尋を除く)
・なぜか家にある法隆寺の瓦 ほか書籍多数
コンセプト
金堂壁画コロタイプ印刷の複製プリント(宝塚市立中央図書館 所蔵)
金堂壁画の複製写真は、昭和10年に京都の美術印刷会社・便利堂がガラス乾板に原寸大撮影した写真のコロタイプ印刷の複製品のデータプリントで、複製品自体は国内外25箇所の博物館、図書館、大学などに頒布されました。宝塚市立中央図書館もその所蔵先の一つで、2014年に同館で開催された「宝塚歌劇のあゆみ」展に金猊が東宝劇場の壁画に描いた『薫風』の下絵を出品したご縁で、今回その複製写真をお借りできることになりました。
法隆寺に現在設置されている壁画はこの写真を下図として安田靫彦や前田青邨ら当時の精鋭画家によって模写制作が行われており、実物を実見できない画家の目を補完する重要な二次資料となりました。しかし、当時の画家の手記を読むと写真に写った壁画の剥落や変色をどう捉えるか、将来の経年変化をどう想定するか、線描と色彩のどちらを重視するかなどで考え方にも差異があり、現物に忠実な写生と言ってもそこに画家の想像力に委ねざるを得ない面があることが伺えます。言い換えるなら模写から完全にそれを描く画家の作家性を消し去ることはできません。
丸井金猊ラボ∞谷中M類栖では、その複製写真を1号壁〜12号壁まで全12点、6号壁に関しては実寸サイズで出力し、他は縮小サイズにて、なるべく法隆寺と東西南北において同位置になるように展示します。また、プロジェクターを使って線描の写真に桜井香運、鈴木空如、安田靫彦、前田青邨らの着色した模写画を合わせるような実験も出来たらと考えています。
※著作権の都合で、法隆寺金堂壁画の複写画像はモザイクを掛けています。
※東側の壁面は図面に起こしにくかったので昨年の芸工展展示写真に嵌め込みました。
百済観音を画中に収めた丸井金猊「観音圖*」(谷中M類栖 所蔵)
一方、23年ぶりに東京で公開されることになった像高約210cmの百済観音像の実物は、出所不明の謎多き仏像で、百済観音という名前が付いたのも大正時代に入ってからと言われています(それまでは虚空蔵菩薩と呼ばれていた)。
その百済観音を昭和11年頃に金猊は高さ226cm、横幅332cmの屏風(仮題「観音圖」)の中に描きました。
但し、金猊の観音は法隆寺の百済観音が右手を前に差し出し掌を天に向ける与願印の印相をしているのに対し、腕を上にあげ、中指を折るようにして蓮華を摘まんでいます。左手も実物は親指と中指で水瓶の口を摘まんでいるのに、何も持たずに親指と中指を合わせた中品中性の説法印の印相をしています。他にも宝冠や胸飾、腕釧を現物は錆びているにもかかわらず、新品の黄金色に仕立て上げました。そして百済観音を挟んだ人物の衣装にも他の観音像の衣相からの引用と思われるパーツが多数あり、金猊は百済観音の模写から想像を広げ、遊び心一杯の世界観を創造しています。
丸井金猊「写と想像⇄創造」展では、東博での展示と同一の対象を扱いながら複数の「写」を通じて見え隠れする「想像⇄創造」の間の、模写画家のみならず、それをみる/みてきた人々の反復に目を傾けて行きます。本来ならば特別展をみてからご覧いただきたかったのですが、その叶わなかった無念への鎮魂(レクイエム)と関係者の皆様への感謝を込めて祈りを捧げられるような場にできればと考えています。