丸井金猊

KINGEI MARUI

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法隆寺金堂壁画 再現壁画 第12号壁 十一面観音菩薩像(近藤千尋)

第十二号壁(十一面観音菩薩像)再現壁画 全図

縦311.6cm × 横(上幅) 158.7cm (中幅) 153.1cm (下幅) 152.5cm

岩上の蓮華座に頭光と身光を負った十一面観音が右手は垂下して

聖索の端をつまみ、左手に長茎の蓮華を執って正面向きに侍立する。

法隆寺金堂壁画の「写と想像⇄創造」

第12号壁 十一面観音菩薩像
近藤千尋 前田青邨(前田班)

「第12号壁 十一面観音菩薩像」を担当した前田班の前田青邨、近藤千尋のうち、本稿では
近藤千尋氏のメッセージと作品を紹介いたします。
前田青邨氏のメッセージ+作品は「第10号壁 薬師浄土図」にて。

12号壁は焼損以前はたいへん黒い壁であった。黒(かび)が壁面全体をおおうていて、色彩も形もそれとは判別しがたいほどであった。その黒徴をある程度取除いた状態の、いくぶん白い壁にして描き上げるように終始努めた。

法隆寺金堂壁画 第12号壁 十一面観音菩薩像 コロタイプ印刷仕事が進むにつれて、頼りにしていた原寸大の写真があまり頼りにならないことに気がついた。この原寸写真も黒徽に災いされて、細部になると判然としないところが多い。肝心の十一面、化佛(けぶつ)、両の御手(おて)など皆しかりである。幸い一部分の赤外線写真があったので、それと焼損壁画を拝みに行くことで仕事を進めて行った。

蓮華をお持ちになっている左の御手は原寸写真では極端にいえば、どれが御指でどれが空間なのかわからないほどであったが、焼損壁画にはアウトラインというかその部分の面としての彩色が残っているので、それを頼りにして形をとらえていった。お持ちになっている蓮華もまたしかりである。他にも重要な個所で、このような思いをしたことがたびたびあった。

十一面様は半月形の宝冠をおつけになっていて、その宝冠が美しい忍冬(にんどう)唐草で飾られていると聞いているが、焼損壁画を拝見しても赤外線写真を見てもよくわからない。これは仕上げ近くまで何となく曖昧な形しか描くことが出来なかったが、田中一松氏蔵の焼損直後に写された写真を拝見することができて、それには忍冬唐草がよく写っていてたいへん参考になった。

火熱による顔料の変色はかなりひどいもので、緑青は黒く変色している。お腰のあたりにおつけになっている紐というかヒレのようなものの格子模様も焼損後は変色して非常にハッキリしているが、以前はそうではなかったので、それは淡い調子の緑青で描き上げた。

台座蓮の華文も緑青、丹、朱土など変色と剥落がひどくて残念ながら元の姿を想像することもできない。

壁画再現の仕事で、細部を追究してゆく行程では、すべて描き得るものを描くことができて、それから千有余年の古色をつけることになったが、この仕事はあまり困難はなかった。ただ、いつのころか汚された墨汁の跡などは描き込まなかった。

法隆寺再現壁画 大型本(朝日新聞社・1995年10月刊行)より

赤色下線がピックアップフレーズ、緑色下線は候補フレーズ

第十二号壁(十一面観音菩薩像)解説

縦311.6cm × 横(上幅) 158.7cm (中幅) 153.1cm (下幅) 152.5cm

岩上の蓮華座に頭光と身光を負った十一面観音が右手は垂下して聖索の端をつまみ、左手に長茎の蓮華を執って正面向きに侍立する。頭部には各化仏をつけた菩薩面9と如来面1を配し本面と合わせて11面の観音像で、こうした雑部密教像はわが国ではもっとも早い例。下方には岩や土坡を描き、対面の聖観音(第7号)ともども観音の住処である南海普陀落山の気色を表す。

Wikipedia: 12号壁・十一面観音立像

西壁の北端。8つの小壁に描かれた菩薩像のうちでは唯一、真正面向きに立つ。向かい合う位置にある7号壁の観音菩薩像と対をなす。

丸井金猊ラボ∞谷中M類栖/1f 展示プラン

法隆寺金堂の東壁北側に位置する第12号壁は、スペースの都合で方位が異なりますが、丸井金猊ラボ∞谷中M類栖/1f北壁中央下位置右側に110×56cmの約36%サイズに縮小したプリント紙を壁面に張り付けました。

丸井金猊「写と想像⇄創造展」展 西側壁面 - 法隆寺金堂壁画 第8〜12号壁プリント
※著作権の都合で、法隆寺金堂壁画の複写画像はモザイクを掛けています。

画家の報告 clip ピックアップ×2

仕事が進むにつれて、頼りにしていた原寸大の写真が
あまり頼りにならないことに気がついた。
この原寸写真も黒徽に災いされて、細部になると判然としないところが多い。
肝心の十一面、化佛(けぶつ)、両の御手(おて)など皆しかりである。
幸い一部分の赤外線写真があったので、
それと焼損壁画を拝みに行くことで仕事を進めて行った。

十一面様は半月形の宝冠をおつけになっていて、
その宝冠が美しい忍冬(にんどう)唐草で飾られていると聞いているが、
焼損壁画を拝見しても赤外線写真を見てもよくわからない。
これは仕上げ近くまで何となく曖昧な形しか描くことが出来なかったが、
田中一松氏蔵の焼損直後に写された写真を拝見することができて、
それには忍冬唐草がよく写っていてたいへん参考になった。

序    法隆寺金堂壁画の「写と想像⇄創造」
第1号壁   釈迦浄土図・・・・・吉岡堅二(吉岡班)
第2号壁   菩薩半跏像・・・・・羽石光志(安田班)
第3号壁   観音菩薩像・・・・・平山郁夫(前田班)
第4号壁   勢至菩薩像・・・・・岩橋英遠(安田班)
第5号壁   菩薩半跏像・・・・・稗田一穂 吉岡堅二 麻田鷹司(吉岡班)
第6号壁   阿弥陀浄土図・・・・安田靫彦 吉田善彦 羽石光志(安田班)同壁部分紹介
第7号壁   聖観音菩薩像・・・・稗田一穂 麻田鷹司(吉岡班)
第8号壁   文殊菩薩像・・・・・野島青茲(橋本班)
第9号壁   弥勒浄土図・・・・・橋本明治(橋本班)
第10号壁 薬師浄土図・・・・・前田青邨 守屋多々志(前田班)同壁部分紹介
第11号壁 普賢菩薩像・・・・・大山忠作(橋本班)
第12号壁 十一面観音菩薩像・・前田青邨 近藤千尋(前田班)