丸井金猊

KINGEI MARUI

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2015年 小学館『日本美術全集』第18巻

解説48『壁畫に集ふ』丸井金猊 谷中M類栖 東京
藤井素彦(新潟市美術館学芸員)

壁畫に集ふ

 丸井金猊(1909〜79)は1933(昭和8)年、東京美術学校(現在の東京藝術大学)日本画科を卒業、1935(昭和10)年に同研究科を修了。同期の杉山寧(1909〜93)らとの「八年会」の集いは長く続いたというが、主任教授の結城素明など、母校と画壇の先達に親しめないところもあった。

 この作品は、雑誌『美術眼』などを出した現代美術社が主催する第一回現代美術展覧会の入選作。肥痩(ひそう)のない描線は、東洋絵画の遊糸描(ゆうしびょう)鉄線描(てっせんびょう)を思わせるが、それを極度な複雑さで交錯させている。極彩色の賦彩(ふさい)や、様式化された人体像も、絵画・彫刻・建築にわたる東西の古典を自在に参照したもの。同時代の画題を、日本・東洋・西洋の美術史の複合体(ハイブリッド)として描く。東西の空間軸、古代と現代にわたる時間軸の双方の統合において「日本画」が実現されるという確信であろう。(つづく)

2015年4月24日発売 小学館『日本美術全集』第18巻「戦争と美術」に掲載された丸井金猊『壁畫に集ふ』の藤井素彦さん(新潟市美術館学芸員)による解説。執筆前に谷中M類栖を訪れ、屏風『壁畫に集ふ』の原画ほか金猊作品を入念に取材され、金猊の自筆原稿が掲載された雑誌『美術眼』も発掘された。全集発売が間もないため、原稿掲載は途中(半分)までに留めるが、転載した最後の行で一つの核心に迫られている。続きは小学館『日本美術全集』第18巻「戦争と美術」を購入して是非ご覧ください。