丸井金猊

KINGEI MARUI

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1997年 その周辺の人たち展文集

仰げば尊し
加藤茂元(神工 工芸図案科 2期生)

 45年前、神奈川工高の工芸図案科。

 学校は空襲で焼け、粗末な木造校舎と貧弱な教材、そこへ勉強不足の生徒達といった状況でしたから、先生方は教育の手段に窮しておられました。

 謹厳な容姿の丸井金猊先生の授業は、楷書体を見るような気品があり、明晰な日常の訓話は諭すよう懇切で、この学校の現況を教師の熱情でカバーしようと、日夜心を砕いておられました。

 が、3年の月日は短く、卒業生を送り出す先生の憂慮は側側とし、憐憫の情も重なって生徒達へのお心配りには、胸が打たれる思いでした。

 私たち、恩師丸井先生に対する敬愛の念はさらに強まり、今憶い出は尽きません。三鷹のお宅で大勢泊めていただき、優しい奥さまの手料理に、温かい家庭人としての一面もかいま見ました。同窓会にも度々ご臨席いただき、社会人に成長した教え子達の姿に、安堵の表情で心から喜んで下さいました。

丸井金猊とその周辺の人たち展(1997年)文集に寄稿された神奈川県立神奈川工業高校 工芸図案科第2期生 加藤茂元さんのメッセージ。