Letter - 手紙 -

「母さん」よ、本当はボクにとっては妻なのだけれど、何故か、「おい」とも「お前」とも呼びづらいし、呼びづらい名前なので困ってしまう。だから、そして今では最もよびいい呼称で「母さん」── にする。こんどボクがこちらに入院してからいろいろと心配させてしまった。もちろん普段から亭主関白で何から何まで世話をかけ心配させ、厄介になり、困らせたりへこませたり、泣かせたりしぱなしで心から済まなく思っているのだけれど、今度のことは全く思い設けぬ突発事態で、何とも手の施し様がなかった。暗黙のうちに、退職後はお互いにもう少し落付いて家事にあたり、余裕をもつようにしてたまには二人で仲よく近くへ出かけたり、旅行や保養も実行に移したいと思っていた矢先だったのに、あっと云う間もなく即日入院、爾来一夜として抱き合って愛し合ったり寝たりしたこともない。すでに一ヶ月以上過ぎ去った。我々にとって一日は愚か、一時間、一分、一秒と雖も生きている間の貴重な時なのに。別居を余儀なくされた。

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