丸井金猊

KINGEI MARUI

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朝日新聞:旧東京宝塚劇場「幻の壁画」下絵を公開

兵庫)旧東京宝塚劇場「幻の壁画」下絵を公開
朝日新聞(鈴木裕)

宝塚歌劇のもう一つの拠点「東京宝塚劇場」(東京都千代田区)。戦前に建てられた旧劇場の階段ホールに、乗馬する女性の群像を描いた「幻の壁画」があった。歌劇100年にあわせ、その下絵が宝塚市立中央図書館(清荒神1丁目)でお披露目されている。

壁画のタイトルは「薫風(騎馬婦人群像図)」。旧劇場の完成から3年後、1937(昭和12)年に日本画家の故丸井金猊(きんげい)氏が制作した。古今東西の様々な絵画様式を採り入れた独特の作風で、女性たちの姿を描いている。

実物はすでにない。旧劇場を所有した「東宝」によると、58年の劇場火災で焼失した可能性が高いという。旧劇場は1997年に閉館し、その後の建て替え工事でなくなった。

金猊氏の孫でウェブデザイナーの丸井隆人(たかと)さん(43)=大阪市北区=によると、金猊氏は1909年、現在の愛知県一宮市で生まれた。東京美術学校(現・東京芸術大)を卒業し、日本画家として活躍した。

だが、戦時色が強まる中、その画風が当時の社会にそぐわず、やがて画業を離れたという。戦後は神奈川県立神奈川工業高校の教諭としてデザインを指導。1979年に69歳で亡くなった。

生前、画家としての業績を語ることは少なかった。遺品整理で見つかったのが、壁画の下絵(高さ3メートル、幅3・5メートル)やモノクロ写真だった。実物がどういう色合いで、どんな雰囲気だったのか、今となっては、はっきり分からないままだという。

隆人さんは「壁画に見覚えのある方がいれば、ささいなことでも教えてほしい」と呼びかける。今回の展示を通し、「当時の様子がわかる写真などが新たに見つかれば」と期待する。

下絵は、5月13日まで市立中央図書館で開催中の「宝塚歌劇のあゆみ」展で、歌劇団の歴史を振り返る約100点の資料とともに公開されている。

入場無料。水曜と5月9日は休み。問い合わせは中央図書館(0797・84・6121)。

(鈴木裕)