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叔父の思い出(1)

 私の母は九人兄弟の2人目、叔父は6人目、結婚までの10年程一緒に過ごしている。兄弟が多ければ特に上の女の子は、母を助けて弟たちの面倒を見たのであろうし、弟たちも何かと姉を頼りにし、少子時代の兄弟が経験しない兄弟愛を育んだに違いない。
 私が小学生の頃、タ方まで遊んで帰ると母は釜戸の前に座っている。私も隣に座ってその日の出来事を話す。そんな時の母の話に、同じ兄弟でも性格の差があるものだと、5人もいる弟を例に話してくれた。金さ(叔父)は小さい頃からお洒落で、身だしなみも行儀もよかったと具体的に話してくれた。それは多分、私が正反対のための母の戒めであったであろうが、その後叔父に会う度に、その話を思い出した。叔父が白い背広にパナマ帽姿の時など、子供心にまぶしいばかりだった。

金兄のことを私は金様と呼んで育った。自他ともに四角四面で嘘つきや約束を違えるのが大嫌いだった。厳しい人だった。

姉三人が若く嫁ぎ、兄三人、弟二人の中で育った私は男性には免役で暮らしたので、お転婆でぞんざいでいつも叱られてばかりだった。何しろ柿やいちぢくなど取るにも兄達が木へ登ると私も登るので「女の癖に」とか「女らしくせよ」と叱られてばかりいた。両親より金様の目の方が怖かった。

─木材工芸科にもふれて──

神奈川工業高校工藝圖案科

 戦争中廃科の憂目をみていた工芸図案科が、終戦後の学制改革で三年制の工業高校として発足するに際し、木材工芸科とともに復活することになり、バラック建ながら機・建・電・電通の諸科と並んで新生の意気に燃え立ったのは、13年前の昭和23年春のことであった。旧制工業校から引続き高校へ切換った当時の諸科とは別に、木・図の二科はこの年新たな募集に応じて入学した生徒一年生だけで、そのうちには他の科からの転科者も若千あった。定員数は二科各々25名のところ、図案科7名、木材工芸科16名であったが、これで神工家族揃っての感激は現職員、生徒一同のみのものではなく、神工を護持するすべての人士の歓喜である筈のものであった。

 何時の間にか詩的となった私の幽かな想像は直ぐ現実となって行くらしい。

 ほんとうに森厳な深夜である。一人で起きているには惜しい程其れ程余りに尊とすぎる。万象の総べてが沈痛な呻吟をもらしているかとも思われるが、そうでもない。耳を傾けて何物かを聞き出そう、出来る丈遠くの物音を──生の囁きでも死の歔欷でも──を聞こうとしても、机の抽出の中の腕巻き時計の金属的な微妙なるセコンドを刻む音ばかりがそれを防ぐかの如くチクタクと響く。

 バッタリと分厚な古典劇の書物を閉じて、堅い表紙を赤鉛筆のキャップでたたき乍ら、ふと自分が此の広い世の長い夜の中で唯一動いている蠢いている人だぞと思う。そうして此の世の中でこんなとりとめもない事を考えているのも自分一人かしらと思う。

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